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目線の紐



紐、ひもにまつわる話です

私が子供のころよく利用した都電は
運転手さんと車掌さんの二人乗務でした
利用する系統番号が、4,5,34などですから
1000、1200型などの中型です

新宿と築地を結ぶ電車は、4000、5000などの大きい車両が走っていましたから
3扉3人乗務などというのも見かけましたが、乗ったことはありませんでした
もっぱら2ドアの1000、1200でした

車掌さんからの発車、停止の合図は、やがて、7000、8000などがデビューするころブザーに変わりますが
それ以前、戦前から戦後にかけては紐でした
車掌さんが、天井から下がっている紐を引くと
運転席の天井近くにある鐘が鳴ります
2度引くと、鐘がチンチンと2回なって、発車オーライ
一つだと次の停留所で、止まれの合図です

車掌さんの紐は、つり手のステイ辺りを伸びて車内を縦断し、運転席まで達していました
ですから車内で見上げると、露出している紐が、車掌さんの操作のたびに動くのがよく分かります
紐は、少し弛みがありました
車掌さんが紐に手をかけると、あらかじめ少し引きます
天井の紐は、弛みがなくなって一直線に近くなります
ころあいをみて、車掌さんが手首を軽く動かしてキュンキュンと引くと、緊張した鐘の音が響くというわけです
弛みをなくしてから引くと、いい音が出たんですね
二つ鳴らす時の間も短くなるから、張りや緊張感も出たし・・・

あるとき、進駐軍の兵士が4~5人乗り込んできました
若い兵士です
背丈は・・・雲をつくほどではありませんが、それでも我々より高いのです
頭には例の角ばったGIハットをかぶって立っていました
全員赤ら顔
肌が白くて、仲間同士のおしゃべりで高揚していたからそう感じたのかもしれません
そのうち、誰かが例の紐と、その動きを発見しました
やはり背が高いから、紐はほぼ目線というわけです
そしていたずら・・・

最初は車掌さんと同じように1つ、2つと鳴らしていましたが
電車の運転に支障ありませんでした
車掌さんは、ただただ困惑していましたが、運転手さんはどこ吹く風・・・
やがて鐘の音はジャズっぽいリズムを取り始めたではありませんか

乗務員も、我々乗客も、何もいえないそんな時代の出来事でした


(5000のレプリカが新宿区役所の関連施設にあります。すごくいい出来で、停留所つき・・・)
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