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029,「磐越西線C57 雪のクリスマストレイン」

●029  データ
「磐越西線C57 雪のクリスマストレイン」

積雪を飛ばすC57の走行が見所。回送DE10重連も。
主演:C57180,助演:DE10×2、

動画: 4分30秒
撮影: 2013年12月14/15日
制作: 2013年12月16日


●動画エッセイ 
「磐越西線C57 雪のクリスマストレイン」

月日の経つのが際立って早く感じる年齢になってしまいました。
つい先日まで、暑くて暑くて辟易していたのに、街路樹のケヤキの紅葉もいつのまにか葉を落としたころ、
「今年最後のC57を撮影に行きませんか」
神谷さんからお誘いを受けました。
う~ん、会津のC57ねぇ、それはそれは興味はありましたが、直後にラジオの生番組が2本控えていたので、即決出来ませんでした。
「ご都合、何とかなりませんか。とにかく12月14日にC57が走るなんて、室蘭本線の終焉以来、初の出来事のように思います。ぜひおいでになりませんか」
そうか、12月14日。それを聞いては黙って過ごすわけには参りません。
「よし、行きましょう」
返事をしていました。最初の生放送は16日の朝です。大雪でもない限り、中一日あれば帰れるだろうと、いつの間にやら行く気充分です。

14日、車は快晴の関東平野を北に向かって走行していました。冬型の気圧配置です。運転は車のオーナー上島さん。助手席に神谷さん。後部座席は私と、奈良から参加した和田さんの4人です。
矢板から黒磯にかけて、高速道路の両サイドに、白いものが目に付き始めました。
「雪の状況はどんなでしょう・・・」
「磐越道はチェーン規制しているようですね」

目的地の上野尻~徳沢に到着したのは、列車通過の1時間ほど前でした。積雪は30センチほど、なおも断続的に降り続きます。すでに最初の踏切付近の丘の上には、たくさんの三脚が並んでいます。
2番目の踏切付近もずらり。
「どちらで撮りましょう」
運転の上島さんの声です。前回、4月に来たときは、皆さん最初の踏切近くの丘に上がりました。私はその下、レールとほぼ同じレベルの農道脇にカメラをセット。全員アウトカーブ狙いです。
「今回は直線にしましょうか」
皆さん同じ考えです。理由はほかにもあって、
「煙、ここまでなら期待できます」
「ラッセルの雪の飛び具合も、直線のほうがきれいでしょう」
「人が増えても、ここなら全員ゆったり狙えそう・・・」
などなどで、直線狙いとなりました。
雪は相変わらず、シャワーのように降り注ぎます。

誰かの携帯がなりました。
「え、倒木? 運転見合わせ中?」
緊張が走りました。
喜多方~山都間で線路が塞がれているというのです。これから撮影地に向かうディーゼルカーが、喜多方で立ち往生してしまった友人からの連絡でした。
規模はどうなのか、倒木は大きいのか小さいのか、1本なのか複数なのか、完全にレールに落ちているのか、それとも倒れかかっているのか、復旧の作業に入っているのかどうか、などまるで分かりません。
30分、40分と、時が経過します。
そんな時、踏切付近の集団に混じっていた、神谷さんから携帯が入りました。
「SL列車は、いま徳沢に停車しています。とりあえず10分後に現場通過の予定だそうです」
これだけ人数が多いと、誰かしら情報通がいるようです。それまで静かだった撮影地が急に活気付き始めました。

耳を澄ますと、遠くで汽笛が聞こえました。踏切がなり始めました。さあ来るぞ。皆さんの体に緊張がみなぎります。
ドラフト音が徐々にはっきりとしてきました。真っ白な雪のカーテンの彼方に、動く物体が見えました。
ぐんぐん近づくと同時に灰色だったその物体に力が加わり、しまりある漆黒へと濃度が上がります。
こちらのテンションも濃密にになり、体が興奮で硬直していく様子が分かりました。
同時に意識が薄らぐように空白化し、握り締めていた指先の感覚も弱まって、自分が今何をしているのか、これから何をしなければならないのか、判断がつきかねているようです。
ファインダーの中で、辛うじてラッセルする雪の飛び方を目に捉えると、実にきれいだという信号が脳に送られました。
それを確認すると美しさに酔いしれたように、パンニングのスピードが弱まって止まりそうになりました。
意識を取り戻そうと試みますが、限界。
ゆるゆるとカメラのスピードが落ちると共に、意識も再び空白化していきました。

結局この日のSL列車は、上野尻の次駅、野沢で長時間停車したあと、倒木未処理の結果を踏まえて運転打ち切り。せっかくの野沢消防団奮闘の給水もむなしかったようです。

1975年12月14日、現役SL牽引の最後の旅客列車を私は、沼ノ端~植苗間で迎えました。
目の前のレール両サイドに広がる勇払原野に、雪らしい雪はありませんでした。
列車は2時間近く遅れ、寒風の中に立ち尽くしていたのに、寒さを感じていませんでした。そのとき40歳。
今回の遅れはおよそ1時間。遠くのドラフト音を確かめ、カメラのスイッチを入れたのが、12時54分25秒でした。いま私は78歳。それなのに、寒さは感じませんでした。
まるで、あのときのように。

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